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  • 執筆者の写真吉岡徹

視覚伝達

更新日:2018年12月16日

コミュニケーション(commuunication)

ギロー(P.LR.Guiraud)は「意味論」の中で「意味作用とは対象、存在、概念、事象など、それぞれが喚起しうるように、ある記号を連絡づける道程にある。雲は雨の記号であり、眉をしまかかめる事は困惑の記号であり、犬が吠えるのは怒りの記号であり、馬という言葉は、その動物の記号である。また、記号はコミュニケーションの道具となる」と述べている。広義にはコミュニケーションは、対象間の記号による意味伝達の過程を言い、その語源はラテン語に由来し、英語のcommon(共通の)の意味を含む。モリス(C.Morris)は「二つ以上の個体が記号を媒体として、それらを共通とすることをコミュニケ―ションと呼ぶ」と述べている。では、コミュニケーションの道具となる記号と、それによってあらわされる「もの」と人間とはどのような関係にあるのであろう。

 記号はサイン(sign)、シンボル(symbol)、マーク(mark)などと訳される。シグナルは(sygnal)は記号、合図と訳され、広義な意味での記号と解釈される。サインはラテン語のsignum)(印)より由来し、シンボルはギリシャ語のsimbolon(割符・印)symballein(合わせる、共に投げる)から由来している。シンボル、とシグナルは支持機能をもつが、シグナルの方が支持機能あ強い感覚的意味合いも強く、危険表示の伝達、合図などは、その代表例となる。なお、シグナルはラテン語より、マークはゲルマン基語より由来している。

 コミュニケーションは、朝の目覚し時計のベル、ラジオの音楽、会話などのように聴覚的に図、絵画、手話、演劇などのように視覚的に、点字、握手などのように感覚的に、香水、花、料理の臭いなどのように臭覚的に、そして味覚、寒暖感、痛感など様々な感覚によって成立する。それは、すべて人間の器官にかかわる。つまり、人間はコミュニケーションによって行動する。服装や態度、その時の会話も伝達のための道具であり、他人への証としての自己主張となり、身分や職業、性格を示すことになる。日常の生活のなかでも、樹木の茂り具合、日差しの強さ、星の位置の変化は月日の移り変わりを示すが、これも自然が人々に示す広義の意味でのコミュニケーションとなる。

 ランガー(S.K.Langer)は「シンボルは対象の代理ではなく、対象についての表象を伝えるものである」と述べて、シンボルは主観的に対象を表象させるものとしている。スーツはビジネスマンのシンボルであり、都心の庭付き一戸建てやヨットは生活の豊かさのシンボルとなる。それは自己を代弁するものとして、他社への語りかけとして「もの」が存在する。

 人間の伝達能力は、胎内にいるときから、外界と心理的、生理的につながりをもつ。生後3か月頃の伝達能力は、表現できなくても、感覚的には応答能力をもち、2歳ぐらいで言語伝達が見られ、5歳で複数の相手に伝達する事が可能となり、8歳ぐらいで言葉を十分駆使できるようになる。18歳ぐらいで一通りの伝達能力の力をもち、30歳ぐらいで、方式的に伝達手段をマスターする。

 伝達方式としては、目覚し時計や日記の様な自己伝達、特定の個人に意思表示をする対人伝達、会議などの複数の人間同士による集団伝達、講演や司会など複数の人々に単独で伝達する場合などについて考えられる。

 コミュニケーションは言語伝達(verbal-communication)と非言語伝達(non-verbal communication)に分類される。前者は言語によって行う伝達で、情報手段としては最優先の方式となり、規則的、論理的に体系化されたものである。後者は幼児、外国人、ろうあ者など言語使用の未熟な人々、演劇などにみられる身体表現を主として伝達する場合(gesture language)、絵や図などによる伝達(pictorial language)、服装や建築様式により象徴的に伝達する場合の伝達(object language)などに分けられる。非言語伝達は心理的要素が強く、

受け手によって伝達内容に違いが生まれるが、言語伝達においても、手書きと活字の場合、大きい字、小さい字、早口とゆっくりした口調などにより、受けては心理的に異なった印象をもつ。

 以上、記号の概略について述べたが、それらは図1.12のように図形化される。次の項では視覚伝達方式のなかでデザインに関わる各種記号について述べる。


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