点の構成
点は1個の時には、注視的で求心的な性格を持つ。2つになると点との間に心理的結合が生じ虚線が生じ、それは視覚的な測定手段の基本となる。平面におけるアクントとなり、平面との関係において存在競争が行われて、お互いの性格の完全化を求め緊張感を生ずる。造形においては、構成要素が相互関係によって打出す緊張感の事をシュパヌング(Spannung)と呼ぶ。カンディンスキー(Kandinsky)によれば、絵画の内容を具体化するものは外形ではなく、形態が包含する活きた力、すなわち内的に構成されたシュパヌングの関係によって作品内容が表現されると説明している。シュパンヌングは直線には2つ、曲線には3つ以上が含まれ、色彩においては、進出色と後退色とがシュパヌングと解釈される。
図2.8aのように点が粋組の中心にあるとには、力関係が上下均等に働き静的表現となる。この点をbのように左に少し移動させると、右から左に動的な表現が生じる。この時、cのように右側に対称的に点を置くと左右均等の力が生じて動的イメージは消え、静的イメージになる。dのように一方を大きくすると、まず大きい点に、次に小さい点に視線が移動して、小さい点は大きい点に引き寄せられる。eの点は、その位置が曖昧な為不、安定な感じになっているがfは粋組の右下角から左上に向かう対角線上に点が配置されている為に、動的な力が生じた表現になっている。gは、2つの点が粋組の中心からそれぞれ等距離にあり、力の均等が生じて静的なイメージになっている。hは3つの点が配置され、三角形が連想される(虚面)が、この図において、上の点に比べて下の点は小さく、左上の点は右上の点に比べて小さな感じを与える。これは人間の体や利き腕、重力との関りから生じる現象で空間異方性(anisotropy of space)という。空間異方性については錯視の項で詳しく述べるが、我々が普通、左右や上下に感覚的バランスをとり、安定を求めて生活していることに関わる現象である。iは点の並列により、虚線が生じ、j.,kは虚面がみられる。lは点の配列が意図的でない為に虚線も虚面も感じられないが、その不純一な構成は動的な表現が雑然とした中に見られる。
m~oのように点の大きさを規則的に変化させると、奥行や方向性が強く感じられ、配列の増加と共に虚面が生じる。点の等差的配列として美しいが、単調になりやすい。しかし、pのように配列に変化をもたせると動的空間性が生じる。qは配列と共に点の形態自体に変化を持たせることで強い空間性が生じている。点の形態変化による効果は、印刷物によく応用されるが、図rはその例、
図2.9aはbより暖かいイメージを我々に与えるが、これは被服の柄やインテリアに置き換えて考えると理解でき、夏に白地より黒地の方が暑苦しく感じるのと同じ感覚である。cのように円の大きさや位置に変化を持たせると、空間的、動的表現となる。dには円の濃淡による空間的表現がみられ、対象が遠ければより淡く見える大気遠近法の原理に通じる。
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