• 吉岡徹

形態の基礎理論・・現実的形態・・人為的形態

更新日:2020年2月7日

人為的形態

 自然的形態は地球上に人類が誕生した時点で、既に存在していたが、人為的形態は偶然以外は技術と知識を得なければ求められなかった。なかでも、造形とかかわりの強いものはガラスと金属である。新石器時代になって、人類がガラスと金属を知り、中石器時代にはガラス質の黒曜石を用い、刃物や飾り物や護符などに貴重なものとして用いた。古代メソポタミア時代になると金属の精錬、鋳造、鍛造の技術が成立。その使用範囲も広がったが、ガラスもBC3000年頃に吹倬製造技術が小アジア地方に生まれ、今日の形式と同じ方法を確立した。この技術はローマで押し型や板ガラス加工の技術に発展し、モザイクガラスをはじめ、工芸品が盛んに作られた。特に建築の領域では多く使われ、AD79年に噴火で埋没したポンペイのフォーラム浴場、中央浴場の窓ガラス使用やビザンチウムのステンドグラス、ローマの協会に見られる無色透明のガラスなど幅広く人々の間に利用された。なおガラスは、昔ソーダ―塊を運搬中に、船人が海岸で石の代わりにかまどとして,ソダ―塊を用いたところ、砂と融合して、ガラスができたといわれる古い歴史を持つ素材だが、科学的解明は近代になってからである。

 金属が使われだしたのはBC5000年頃であるが、その後、鉱石から金属を得る治金の方法も工夫され新石器時代になり、エジプトで銅器が使われだした。やがて、銅と錫の合金である青銅が発見され、ヨーロッパ青銅時代には刃物や武器が多く作られた。しかし、美術品の作品は少なかった。しかし、中国では礼器など美術品に優れたものが多く作られた。同時代は日本では弥生時代にあたり、銅鉾や銅鐸などが作られた。銅と比較して精錬の難しい鉄は実用化に長い年月を要し、鉄器時代に入り、車輪、ロクロ、船などが作られた。

 金属材料としては金、銀、銅、鉄などは代表的なものとなる。金は比重大で他の金属との判別も容易で、展延性に富み鋳造しやすく、貴金属や金属に多用される。銀も金と同様に美しい光沢を有し、錆や変色に強く、その産出量は金より多く、展延性に富み、細工がしやすい、銅は金銀に次いで重宝な金属で展延性に富み、鍛金、鋳造に適し、電気と熱の伝導率に優れている。金属材料は技術的には鋳金、鍛金、彫金に分けられデザインされる。鋳金は板金を熔解し型に流し込み成型し、金工の中でも最古の技術である。鍛金は板金を鎚起により成型する打物と言われる技術で、武具や茶器が多く作られ。彫金は打出し、彫りずし、毛彫、象嵌、片切彫、鍍金などの金属装飾の総称で武具、装身具など古くは古墳時代から用いられ、飛鳥時代に技術が確立したといわれる。

 人為的形態は材料の組成や加工方式が近代になって、加速度的に人々の生活に浸透し、広範囲に用いられ、人工的環境の増大化する一方都市では、その利用も無視できない。しかし自然的形態と異なるその性質はデザイン制作上、気を付けねばならない点がある。プラスティックの茶碗でする食事は味覚が落ちるし、木に似せた公園のコンクリート製の手すりの違和感は受け入れにくい。それは、人類に長い歴史をもって使用されてきた自然的形態が、感覚的に人々になじんでいるのにくらべ、産業革命以降の量産化され、利用されだした人為的形態は無意識に、その使用も厳しい眼をもって使用される。自然の生体の一部である人間が自然的形態に愛着を持つのは自然の理と言えるのに比べ、冷たく親しみにくい場合が多い。