デザインの意義
デザイン(desing=英・Entwurf=独・dessin=仏)はフランス語のデッサン(dessin),
イタリア語のディセーニョ(disegno)、ラテン語のデシグナーレ(designare)から由来している。今日ではデッサンとデザインとは区別され、前者は主に絵画などに用いられる言葉だが、本来は同義である。デザインの意味は、本来芸術作品の制作の為の計画・設計(a plan in art)を下絵、見取図により吟味することであったのが、図案、模様という意味に解釈されるようになり、図は計画、案は考案の意味となり、「図り考案すること」と考えられ、装飾的文様を考案することで、その職人を図案家とよんだ。しかし、現代では図案・模様はデザインの部分的解釈と考えられ「意匠」という用語がデザインの訳語として最も近い意味に用いられ、意匠の意は心、匠は工、巧み、すなわち制作、考案という意味で「心のたくみ」と訳している。
19世紀末までは、対象の表面装飾を考案することをデザイン、その考案者をデザイナーと呼んだが、20世紀になって、大量生産による製品の構造と機能性、加工技術などの総合計画が重視されるようになると、デザインに対して、用と美の統合が要求されるようになった。その頃、ナギ(M.nagy)やマルドナード(T.Maldonado)らは、「デザインとは表面的な装飾のことではなく、ある一つの用途、目的をもって社会的、人間的、技術的、芸術的、心理的、生理的などの諸要素を統合し、工業生産の軌道に乗せていくことのできるような製品を計画・設計する技術をさす」と主張した。
現代デザインは、広義には造形活動全般における計画、狭義には「用」と「美」とをかね備えた計画・設計と解釈する。そこに「用」と「美」との統合との多様な条件克服の必要から、関連領域とのつながりの拡充、多くの人々の協力・参加がおこなわれるようおになった。かつて、古代ローマの建築家ヴィトルヴィウスが「用」、「美」、「強」について言及したが、今日では「用」と「美」との、より強い意義が深く現代デザインにかかわるようになった。
「用」と「美」は、実用性と審美性、あるいは機能性と装飾性とも言いかえられるが、この二つの兼ね合いの比重は、時代や社会環境によって異なり、一定した基準は保てない。しかし、デザインの明確な目的をもって具現化し、合目的にいかに形成し、生活に役立ち得るか、その実用性や審美性が、いかにデザイン表現の過程に意味を成すかは、根源的な問題になる。単に歯車やスプリング、ピストンなどの機能的な技術的造形を対象とする場合は、「用」が大勢を示す造形活動で、「美」とのかかわは弱い。それはデザインとは呼ばずに機械設計となる。デザインとは、あくまでも美的契機が必要で、その具現化技術のプロセスを目標とする生産活動において「美」と「用」を強く意識することが重要となる。
このような意味から、現代デザインは対象の計画・草案を展開する思考過程に意義を有し、具体的には次の事項が基本的要因となる
①使用する材料の可能性
②その材料に対する適切な加工技術
③全体的に見た場合の部分と部分との結合
④これが視覚上、実用上、第三者に及ぼす全体の効果
Commentaires