• 吉岡徹

形態の基礎理論・グラデーション・対称

更新日:2021年4月29日

グラデーション(gradation)

グラデーションとは漸移、段階、階級などの意味を持ち、状態や性質が段階的に変化することで、漸次に変化していく累進的な過程に統一された秩序性が基本となる。色彩の配列、明暗が規則的、漸移的に移り変わる段階はその例となる(図2.57)

奈良時代に仏教寺院の荘厳法として発達し、平安時代には絵画、被服に施された○○彩色は鮮烈で、その斬新的な迫力をもってグラデーションが効果的に表現されている。○○彩色は白地に段階的に配色したもので、その伝統は後代貴人の畳の縁に残り、○○畳と言われた。また、平安時代の女子の礼装である十二単衣の(うちぎ)は重ね着されることによって、襟や裾に美しく、威厳を感じさせる漸移的表現が示される。なお、連続的にぼかした状態は濃淡というが、広義には漸移と同義である。




対象(symmetry)

シンメトリーは対称、相称、均整、均斉などと訳される。語源はギリシア語のsymmetria(共に測られる)から由来している。反語はア・シンメトリーと言う。

平面図形に鏡を垂直に立てると鏡に虚像が写り、実像と左右反対の図形が現れる。また2つ折りの紙の折った部分を任意に切り抜き、開くと、折り目を軸に両側に向かい合った図形が得られる。これらの図形は境界線(対称軸)の両側において、数や位置、大きさは同じで向かい合う。つまり、左右対称(bilateral symmetry)となる。平行四辺形の場合は、二つ折りにしても、その形は重ならない。しかし、対角線の交点を中心として、180度回転させると図形は重なる。この場合は放射対称(radial symmetry),

または回転対称といい、中心の点は対称点と言う。まんじやの紋章、クラゲ、ヒトデなどは、その例となる(図2.58)。

シンメトリーは点(対称点)、直線(対称軸)、平面(対称面)が基本となり、対象軸は正n角形において、線対称図形となり、n本の軸をもつ、円は任意の直径を軸とする線対称図形となる(図2.59)。

シンメトリーの操作の基本方法としては移動、反転、回転、拡大の組み合わせにより種々構成される。移動とは対象が一定間隔で直線上を移動する場合のことをいう。反射とは左右対称、鏡映のことで、回転とは対象が対称点、対称軸の回りを一定角度で回転する場合で放射対称は、その例となる。拡大とは対象が一定の比率で拡大していく場合である。スプリングや螺旋階段は移動回転、足跡は移動反射、透視図は移動拡大となる。

シンメトリーの研究で著名なハンビッジ(J.Hambidge)は古代ギリシャの建築や壺の長さ、面積を数量的に考察し、数値的に割り切れる場合をしたテックシンメトリー割り切れない場合をスタテック・シンメトリー(static symmetry)、割り切れない場合をダイナミック・シンメトリー(dinamic symmetry)と呼んだ。



人間、動物、昆虫の多くは左右対対称、植物は左右対象、回転対称の形式が多い。シンメトリーは生理学、心理学との関わりも強く、近代数学とのつながりにより、最近の研究も盛んである。雪の結晶(図2.60)や鉱物などの無機的形態は結晶学にも関わっている。造形の世界では建築、家具、工芸、被服の様式を見ると冠婚葬祭に関するものには左右対象形式が多い。それは格式、厳格さの表れやすい形式である。図2.61はバウハウスの基礎造形の授業風景で両手による訓練であるが、利き腕に依存しない表現方法は新鮮な感覚を養う訓練としてよい。