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執筆者の写真吉岡徹

色知覚・・同化効果・・プルキ二エ現象

更新日:2021年5月20日

同化効果

周囲の色に影響されてその固有色が隣接する色と互いに反発する場合(同時対比)と、逆に周囲の色に近づいて見える現象(同化効果:assimilation effect)がある。同化効果は、囲まれた色の面積の小さい場合や囲まれた色が周囲の色と類似している場合に生じやすい。


口絵5の赤地に描かれた黒の図柄と白の図柄を比較した時、黒の図柄の部分の方が明るく見える。このような現象は洋服の模様や壁紙などに見られるが、同じ地色の場合、白より黒の図柄の方が色味が増して見えるので洋服地などには黒系を多く混入させて、発色を良く見せたりする。ショーウインドーの商品を引き立たせるために背景を暗くしたり、黒い漆の器に寿司を盛ると新鮮な感じがし、白い容器や魚や肉が盛り付けられていると鮮度が落ちて見えるのも同じ現象である。


図3.5の図は、黒字部分が増えるに従って、その部分の白い部分は灰色味が強くなって見え、反対に黒地部分が減っていく場合には白地部分の灰色味が薄れていく。図3-6の中央の円を十字形の円の中心としてみると明るく、X字型の中心として円を見ると暗く感じるが、この場合には空間を超えてどうかが生じている。図3.7においては、2組の黒の円弧の間の白の円弧は、黒の円弧に挟まれた四角形の部分から白く感じるが、黒の半円部分を意識すると白の円弧と中央の白の四角形の白とは同じ明るさにみえる。この場合、同化と対比の現象が変化して見える。


プルキニエ現象

網膜は眼球の内側にある。網膜上には錐状体(cone)と桿状体(rod)の2種の感覚性細胞がある。前者は明るい光に働き、色の3属性の全てを感じる。後者は比較的暗い光に働く視細胞で、明暗のみにしか感覚機能が働かない。錐状体は網膜上の結像位置の視軸となる中心窩と言われる少し凹んだ部分に集中しているため、この部分に結像された像が鮮明に見える。この中心窩の周辺部に主として桿状体がある。その数が錐状体の約10 /1である。桿状体は、わずかな光でも反応するが色の知覚は生じない。桿状体が主として働いている視覚を暗所視といい、反対に錐状体が主として働いている視覚を明所視という。桿状体と錐状体とが働く状態を薄明視という。

網膜に達する光のエネルギーが大きいほど、我々の目は明るさを感じている。同じエネルギーを持つ各波長の単色光によって生まれる明るさの感覚を視感度とい。明所視条件での錐状体の最高波長は555nmで、暗所視条件では桿状体の波長は最高感度波長510nmである。この最高感度を1.0として、他の波長光の感度とを比較したものを比視感度といい、各波長部分の比視感度に応じて曲線を描くと図3・8の比視感度曲線となる。

この曲線において、明所視は長波長側、暗所視は短波調側に感度が示され、観察条件が明から暗に移行すれば、最高感度も短波長側に移行するので、赤系統の色は明所視条件から暗所視条件に移行するのにしたがって明度は低くみえ、逆に青系統の色は明度が高く見える(プルキ二エ現象:Purkinje phe-nomenon)。この現象はチェコの医師プルキ二エ(J.E.Purkinje)によって発見され、早朝や夕暮れなどの薄明視の時、赤系統の花が黒っぽく鈍く、青系統の花は鮮やかに見えるのはその例である。このように薄明視の時赤系統は見え難いので、表示や器具など危険時に使用するものは白みのある青系統の色や、白と黒との対比の強い色構成にすることが必要となる。なお、薄明視は錐状体と桿状体の両者が共に働くため、像が明確に見え難くなる状態となる。

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