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  • 執筆者の写真吉岡徹

色知覚・・・対比現象

対比現象


 口絵2は、ヴェルトハイマー・べヌシ(M.Wertheimer an V.Benussi)の図形といわれるが、環形の部分が、配置された背景となる2色によって異なった色に見える。2色の境界線上に鉛筆を置くと、より対比が強調される。このように色刺激を呈示したときに、それが同じ色でも、その背景になる色が違う場合、色刺激に対する感覚が互いに影響し合って、色刺激の客観的な性質が強調されて違って見える。これを色対比(color contrast)といい、色刺激の効果を及ぼす方を誘導色(inducing color)、効果を受ける方の刺激を被誘導色(induced color) と言う。無彩色の対比現象、誘導色の明度が高いときには被誘導色の明度が低く、誘導色の明度が低いときには被誘導色の明度が高く知覚される(明度対比:drightness contrast)。したがって、ある色を明るく見せるためには黒と、暗く見せるためには白と組み合わせるとよい。

口絵3は等明度等彩度の2つの誘導色と、中間の色相の誘導色の組み合わせであるが、誘導色の補色残像が誘導色に加わり、それぞれの被誘導色は異なった色相に見える(色相対比:huecontrast)。この色相対比では、普通、被誘導色の色相は誘導色の補食の方向にずれる。口絵4の誘導色は、各々等色相等明度であるが、誘導色の彩度の低い場合は被誘導色は鮮やかを増して見え、彩度の高い被誘導色の場合は、くすんだ汚れた色に見える(彩度対比:chromacontrast)。なお、2つの色が併設され、接している場合、その境界線の周りは、互いに相対する色の補色残像の影響が現れる。この現象を縁辺対比(lateral contrast)と言う。このように同時に色刺激が呈示される時は同時対比(simultaneouscontrast)と言う。これに対して、赤い色面をしばらく眺めた後に淡い緑の色面を見ると、この淡い緑が鮮やかさが増して見える。これは赤の補食の青緑の残像が淡い緑に加方混色されるために生じる現象で継時対比(successive contrast)と言う。

対比現象についてゲシュタルト学説では次のような実験を行っている。

図3-2aの中央の円環は同明度であるが、左側半分の暗い地の円環は右側のそれより、やや明るく見える。これを図bのように円環の半分を境界線にあわせ、ずらしたり、図cのように境界線に合わせて先を線を入れると、円環の明るさに明瞭な差が生じる。

図3-3の図でも、Wと言う字に見えるか、2つのVの字に見えるかにより、対比の差が生じる。

図3-4aの図形においては、黒の三角形の中の灰色の小片と、黒の十字形の傍の小片とを比較した時、三角形の小片の方が明るく見える。これらの図形は図bに示したように三角形は十字型の一部をトリミングしたもので、対面積の点から考えるならば、小面積における黒の三角形の小片は暗く見えることになる。しかし、黒の三角形の小片の方が明るく見えるのは、三角形の小片がなめらかな連続およびシンメトリーの要因により、よい形として、形態的帰属性の強い働きによる。つまり、形の中に含まれているように見える方が対比作用が強いと言うことになる。黒の十字形において、その小辺を少しでも離すと、小片は、より暗くなり、十字形を削除するとさらに暗くなる。

色対比の現象はある条件のもとでは現れ方が顕著であり、同時対比は次のようにまとめられる。

(1)誘導視野に対して、被誘導視野が小さいほど、対比は大となる。

(2)色対比は両視野が空間的に分離していても生じるが、間隔が大になるほど対比は小となる。

(3)誘導視野が大きいほど色対比は大となる。

(4)明度対比が最小の時は色対比は大きい。

(5)明るさが同じときには、誘導視野の彩度の大きいほど色対比は大

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