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  • 執筆者の写真吉岡徹

視覚伝達・・各種の記号・・紋章

更新日:2019年3月23日

2・紋章

紋章とは家柄や諸団体などを表すために図案化した表彰(しるし)のことで、arms,armorial bearingsなどと言われる。通常はcrestといわれ、楯形を4つに区分した形式が多く用いられる。西洋の紋章は中世からはじまったが、その先駆となった国や王のシンボルは古代国家に見られ、アッシリアでは雄牛の形をつけた円盤、古代ギリシャではアテネのふくろう、コリントのペガサス(天馬)、ペロポネソスのカメがシンボルとして知られている。また、古代ギリシャでは戦士が円形の盾に郷土、馬、魚、鳥などを印した。5~6世紀にはイギリスに侵入したジュード人が白馬をシンボルとし、バイキングは赤地に黒い馬を用いた。

今日の西洋の紋章の形式は12世紀の初頭に戦場や武道大会で王や戦士たちが自他の識別のために楯や槍、外袍に彩色や図柄を施したのがはじまりとされたが、十字軍遠征以後、騎士は名誉の象徴として紋章を用いるようになった。今日の形式で最も古い紋章は1127年、イングランド王ヘンリー1世が息子に与えた紋章入り楯をいわれるが、紋章は、はじめは王、領主、貴族、騎士など軍隊に関係あるものが使用したが、やがて僧正、都市、大学、商工業のギルド(組合)などにも用いられようになった。中世ヨーロッパにおいてはクラフト・ギルドと呼ばれ、宗教色の強い同じ職種の手工業者達は15世紀頃からの仲間意識を象徴して紋章を用いた。ギルド(guild)の発生時期は不明だがロンドンでは床屋、鍛冶屋、時計屋、料理屋、桶屋など100種ものギルドがあり、各自が独特の紋章を工夫した。それらは商人や工匠の自分の名前や頭文字によるモノグラム(組み合わせ文字)を用いたものであったが、これと別に国王や騎士と同形式の紋章を用いる事が許されていた。

日本では文永の役の頃から衣服、甲冑、家具などに図柄や色を施したのがはじまりとされ、紋所、家紋といわれ、その図柄の種類は天文・地理系としての日紋、月紋、星紋、雪紋など、植物系としての菊紋、桐紋、牡丹紋、桜紋など、動物系としての馬紋、兎紋、鳩紋、鶴紋、鴈紋、など、築造系としての井桁紋、鳥居紋、格子紋など、器財系としての鈴紋、弓紋、車紋、傘紋、扇紋など、文様系としての菱紋、輪紋、文字・図柄系として文字紋、九字紋、などがある。これらの表現は外国のそれに比べて植物的形態を単純化したものが多く、 外国の様に獅子や鷲、象などの強く勇猛なイメージの動物が少ない。それは我が国が島国で気候風土も温和なことから,その表現内容も静的表現が多いが、その種類は世界に類を見ない程に豊富で約2800種類もある。

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