• 吉岡徹

各種の表現法・・オートマティズム・・デカルコマニー・・マーブリング

更新日:7月21日

オートマティズム

 

対象をイメージに近いものに具現化するために、材料や道具を理解して、色彩や形態を表現する必要がある。それは固定観念や先入観を取り除くことにもなり、表現の幅も広がる。

筆や紙、キャンバスを用いなくても、絵具を撒いたり、滴らしたり(図4.1a)。それを息で吹いたり(図b)。さらに画面を傾けたり、回転させたりすると、偶然的に美しい効果が現れる。このような制約を持たない偶然的(accidental)なオートマティズム(autpmatism)による表現は、有機的な形態が得られる。オートマティズムは計算されたものは得られにくいが、その有機的形態(organic form)は自然の法則にかなった結果を生じ、製図機器を用いた幾何学的形態とは対照的に人間味があるプリミティブな表現が見られる。なお、オートマティズムによる表現は、偶然性が強いからといっても、その制作意図を明確に持たなければならない事は当然である。

オートマティズムは第一次大戦後、ダダイズム(dadaism)から分離したシュールレアリスム(surrealism=仏)の芸術家達が積極的に取り入れた技法である。シュールレアリスムを結成したブルトン(A.Breton)は、1924年「シュールレアリズムとは口頭、記述、その他あらゆる方法で思考の真の作品を表現しようとする純粋な心的オートマティズムである。理性による一切の統制なしに、かつ美学的、論理的な一切の先入観念なしに行われる思考の真実の書き取りである」と宣言した。この運動は、フロイト(S.Freud)の学説に影響を受けたもので、理性の律し得ぬ無意識下のものに表現の源泉を求め、伝統芸術への反抗として、ここに新しい創造意識を求めたのであった。なお、オートマティズムとは工芸品などの成型のための習慣的な自動的テクニックの意味もある。


デカルコマニー

 

ガラス板に絵の具を塗り、紙を重ねて擦る、あるいは吸水性の吸水性の弱い光沢紙を2つ折りにして、片面に絵の具を塗り、面を合わせると絵具が滲んで転写され、偶然的な表現が見られる。これをデカルコマニー(decalcomanie)といい、写し絵、転写、謄写術などの意味を持ち、陶磁器の絵付けに用いる技法から由来した名称である。口絵6は2つ折りにした紙の片面に絵の具をつけ、紙を開いたもの、なお、デカルコマニーはロールシャッハ・テスト(Rorschach test)と言って精神障害のある患者の反応の判定資料として診断用にも使用される。


マーブリング

 

水を入れた器に色料を散らせ棒状のものでかき混ぜると、様々なパターンが生じる。その上に紙や布を置くと水面上の色量が付着するこの時器の中に油成分が付着していると色料が沈んだり、広がらなかったりするので、良く器の内面を洗う。色料は、油性のものはよく浮かぶが、形を自由に表現しにくいので、エナメル等を滴らすと拡散する。口絵7は合成樹脂を布に染めたもの、図4.2は紙に染めたもの。


この技法は墨がよく付着し、古来、墨流しと言われ、平安時代から手芸染色の用法の1つとして、大阪四天王寺蔵の扇面法華経冊子の中にも用いられているが、和服の柄、扇子短冊などに応用された。有彩色表現の場合は色流し染めと呼ぶ。西洋では大理石の模様に似ていることからマーブリング(marbling)と言われている。今日でも、テキスタイル・デザインやファッション・デザイン、エディットリアル・デザインなどに使われ、トルコのマーブル・ペーパー(marbled paper)は有名である。










モアレ


透明なフィルムに点や線を規則的に配列したパターン構成を各々重ねあわせて見ると、光や波の干渉縞のような想像外の模様が現れる。これをモアレ現象(moire effect)と言う。モアレは原図の大きさや角度、位置により表現が多様に変化し、図形が細く規則的で簡潔な場合より表現が変わる。



図4-3aは点、図bは直線、図cは曲線、図dは同心円により構成したもので、それぞれ右下のパターンが原図である。

透明なガラスやプラスチックにモアレを距離を置いて構成したり、箱状に制作したりすると、立体的な表現が生まれ、思わぬ効果を見せるが、それに光を当てたりして、影が写るのを見るのも面白い。

なお、モアレは印刷製版では規則的に構成された点や線を重ね合わせたときに生じる斑紋の状態を言う。この現象は3色版製版、網版印刷物の原稿とするときに生じやすい、しかしグラフィック・デザインでは技法の一つとして意図的に、視覚効果の手段としたりする。