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執筆者の写真吉岡徹

各種表現方法(ローラー、スタンピング、フロッタージュ、スクラッチ、スパッタリング、モンタージュ)

ローラー

ローラを用いると、漸移や表現が生じ、重ねによる効果や薄れていく様子が、筆とは別な変化ある効果が得られる。ローラーの部分に絵の具をつけたり、曲線を描いたり、型紙などを用いると、さらに複雑な様相が示される。型紙(stencil)を用いた方法は染色、版画など造形の世界に使われる一方、荷札や車の横部分の名称等をつけるときなどにも使用される。ローラーの手法は平版方式であるから、凹凸のある上を回転させると、凹部には絵の具がつかないので、植物や紙、ひもなどを置き、その上をローラーに絵の具をつけて回転させると、描写や写真では得られない効果が生まれる。ローラーで制作されたものを削り取ったり、上から絵の具を塗るのも面白い。


スタンピング

力士に色紙に手形をとったり、年賀状に芋版を用いたり、これらこ捺すことによって表現することをストッピング(stamping)、またはプリンティング(printing)と言う。口絵8は玉ねぎ、はす、ピーマンによるスタンピングの作品だが、材料に付着する絵の具の濃度の程度により表現が変化する。なお、金属加工の一つとして、薄板を型打したり打抜きしたりする工程のこともスタンピングと言う。


フロッタージュ


板、石、葉など凹凸あるものにを紙をあて、鉛筆や木炭などで上からこするとそれらの凹凸が紙に転写する。これをフロッタージュ(frottage=仏)と言う。フロッタージュとは、ものを摩擦すると言う意味でシュールレアリスムのテクニックの一つとして、ドイツのマックス・エルンスト(M.Ernst)がコラージュの一部として始めたものである。

図4-4aは板をフロッタージュしたもので、図bは各種フロッタージュを切り取って構成した作品である。フロッタージュの作品では、エルンストの「星をちりばめた城」等の挿絵が有名である。



スクラッチ

厚手の紙に蝋を塗ったり、擦りつけたり、滴らしたりして、これを錐状のもので、ひっかいたり、剥がしたりすることを、スクラッチ(scratch)と言う。スクラッチとは、引っ掻いて描くことである。既製の画材として、スクラッチ・ボード(scratch board)と言って特殊な厚紙に陶土を厚く塗り、インキやガッシュを上に塗ったものがある。これをナイフや彫刻針(drypoint)で描刻すると、ペン画に似た非常に細い線が表現できる(図4.5)。人体構造図やテクニカル・イラストレーション(technical illustration)、挿絵などに用いると効果的である。なお、白色平板のスクラッチ・ボードはカラー・インキなどが退色しやすいので注意する。



スパッタリング

 歯ブラシは刷毛(鹿野の毛が良い)に絵具をつけ、紙の上で金網にこすりつけて操作すると、暈し(spattering)の効果が得られる。暈しは滲み(図4・6)の効果よりも人為的に計算ができる。

図4.7は暈しの効果を用いた応用作品である。


モンタージュ

 モンタージュ(montage=仏)とは、写真や絵画などを組合せて一つの画面に構成する事で、統合、組立てを訳す。初期のフランス映画ではフィルムを断片的に接合して編集(edi-ting)することをモンタージュといった。第一次大戦後にはプドフキン(V.Pudovkin)やエイゼンシュタイン(S.Eisenschtein)などが映画における新しい構成手法として作品を発表。モンタージュと呼んだ。1915年にダダイズムのグロッズ(G.Gousz)とハートフェイールド(j.Hartfield)がフォト・モンタージュ(photo montage)を制作。コマーシャル・フォトに使われ注目された。1925年にはナギ(L.M.Nagy)がフォト・モンタージュを理論化した。

フォト・モンタージュとは組合せ写真のことで、コラージュ的表現となる。図4・8はバウハウスの学生作品である。




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